今度はあなたからプロポーズして









間もなくして、
ベテランらしきウェイターが
ツカツカと足早に近寄ると、
賢三にメニューを提示する。




彼の無駄のない動作に煽られて
留美の背筋にまたピンと緊張感が
走る。




硬さの取れない留美を気遣ってか
賢三は食事のコースからワイン、
デザートまで
すべてを独断でオーダーすると、




「わしの好みで頼んだが、
 留美さんにも
 喜んでもらえるはずじゃ」




と、メニュー表を閉じながら、
自信満々に笑顔を見せた。





正直、留美はホッとしていた。




ワインの好みを聞かれたところで
何をどう頼んでいいのかと
慌てふためいていただろう。




賢三がオーダーしてくれたのは、
場馴れしていないと一目瞭然な私
への気遣いだったのかもしれない。




そう思うと、
不思議と緊張感は徐々に和らいで
いった。







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