今度はあなたからプロポーズして
「じゃあ、もう静岡弁なんて
忘れちゃったら~?」
周囲に気を遣いながら、
奈々子がそっと小声で言うと、
「ハハ、そんなことはないけどさ
でも、それなら、
奈々もすごい綺麗になったよ」
「すごい?綺麗になった??…
じゃあ、前は
綺麗じゃなかったってこと?」
奈々子がむくれて揚げ足を取ると
途端に恭一はたじろぎながら、
「いや、前から…でした」
と格好悪くも後頭部をポリポリと
掻いた。
恭一は容姿もスマートだし、
仕事もデキる。
だが、こと女性への対応となると
からっきし慣れてはいない。
ましてや、今は昔の恋人と
再会してるのだ。
相手に気兼ねがないとなれば、
主導権を握られたとしても仕方がなかった。