今度はあなたからプロポーズして









「飯食うぐらいだったら、
 大丈夫だけど…」




息を切らしながらそう言うと、




「でも予定があるんじゃない?」




と嬉しいであろう気持ちを隠して
申し訳なさそうに奈々子が訊く。




「まぁ、飯だけなら大丈夫だ」




と恭一は安心させるように言った。




「本当にいいの?
 …無理にはいいんだけど……」




「心配ないよ」




と恭一が改めて安心させると
奈々子は時計を見て、




「じゃ、あと少しで終わるから、
 このビルを出て左に行くと、

 【モンパルナス】って

 喫茶店があるの。


 そこで待っててくれる?」




と告げて
またエレベーターに乗り込んだ。




扉が閉まりきる前に見せた
菜々子の笑顔に
恭一はホッとしながらも




(…話を聞くだけだ…)




と自分自身に言い聞かせると、
喫茶店に向かうべく踵を返して
出口へと向かった。
















< 53 / 202 >

この作品をシェア

pagetop