今度はあなたからプロポーズして
青年とお嬢様(賢三と春江)
賢三は記憶を呼び戻すように、
静かにゆっくりと語り始めた。
「留美さんには
想像もつかないだろうが、
戦後のこの辺りというのは
一面焼け野原でな。
急激に復興を遂げてはいたが
そりゃぁ、ひどいもんじゃった
今でこそ食うには困らんが、
当時は明日の食料もままならん
状態での。
わしは小さな食堂の皿洗いで
働いておったから、
残り物の食材で何とか食いつな
いでいた。
朝から晩まで働き尽くめの毎日
じゃったが、
絵が趣味だったわしは
週に一度の休日はあの公園で
絵描きに没頭するのが何よりの
楽しみじゃった。