今度はあなたからプロポーズして









走ってきた春江は
呼吸を整えることも二の次だと
必死に謝っていた。







「はぁ……はぁ……
 ご、ごめんなさい…

 ピアノの……先生が、はぁ…
 なかなか帰してくれ…なくて」







わしは諦めかけた自分の気持ちを
恥じた。





わしなんかとの約束のために
春江はこんなにも
必死になってくれていたのだ。





なのにわしは気まぐれだなどと…





謝るべきはわしの方じゃと
心の中で詫びた。





尚も謝り続けている春江に
優しく言葉を掛けることすらも
せんとな。





自分でも呆れるほどに
当時のわしは気が利かんかった。





茫然とその場に立ち尽くしては
ただただ春江の言葉を待っていた






まぁ、今でも
あまり大差はないが…の。







< 63 / 202 >

この作品をシェア

pagetop