今度はあなたからプロポーズして
走ってきた春江は
呼吸を整えることも二の次だと
必死に謝っていた。
「はぁ……はぁ……
ご、ごめんなさい…
ピアノの……先生が、はぁ…
なかなか帰してくれ…なくて」
わしは諦めかけた自分の気持ちを
恥じた。
わしなんかとの約束のために
春江はこんなにも
必死になってくれていたのだ。
なのにわしは気まぐれだなどと…
謝るべきはわしの方じゃと
心の中で詫びた。
尚も謝り続けている春江に
優しく言葉を掛けることすらも
せんとな。
自分でも呆れるほどに
当時のわしは気が利かんかった。
茫然とその場に立ち尽くしては
ただただ春江の言葉を待っていた
まぁ、今でも
あまり大差はないが…の。
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