今度はあなたからプロポーズして
それから、ほぼ毎週のように
わしと春江は
この公園で絵を描いた。
お互いの絵が完成すると、
その出来映えに一喜一憂しては
親睦を深めていった。
わしが絵を教えるなど
できるわけもなかったが、春江はそれでも頼りにしてくれた
春江の描く絵は、
一風変わっておった。
正確に描写するのではなく、
風景画も人物画も
ある一点だけが強調されていて
何とも特徴がある絵だった。
わしは出来上がる度に
へぇ~っと感心したものだった。
逆に、春江はわしの正確な描写と
色使いが鮮やかだと褒めていた。
「私もあなたみたいに
自由な発想と素直な視点を
大事にしないと…」
と、妙な反省をしては
自分自身を顧みていた。
今にして思えば
良家の娘という立場も
あいつは窮屈だったのかもしれん
当時のわしには
そう気づく余裕すらなく
春江の賛辞を嬉しく思うだけじゃった。