今度はあなたからプロポーズして
「よかったじゃないですか」
わしの中の葛藤は
直前で弱さを選んだ。
春江は黙ったまま
ペンを走らせている。
返ってくる言葉が怖かった。
わしは動揺を悟られまいと
気がつくと
拳を強く握り締めながら
精一杯の笑顔を作っていた。
春江は何を返すでもなく
しばらく黙って
スケッチブックに向かっていたが
急にペンを止めると、
「そうね…
素敵な方だといいわ。
できれば、
素直で嘘をつかない方がいい」
と寂しげにわしを見つめながら、
皮肉交じりに笑顔を返す。
春江もまた精一杯に
笑顔を作っていたに違いない。
その声は
普段の穏やかなものではなく
振り絞るように大きくサバサバと
しておった。
戦わずして諦めたわしを
叱咤するかのように、の。