今度はあなたからプロポーズして









「えっ?? 家…出? 
 今晩泊めて……はあ?」





何がどうなっているのか
訳がわからず返答に困っていると、





「今晩だけでいいんですが…」





予想に反していたのか、
春江は恐々と小声で付け足して、
わしの顔色を窺っている。





黙ったまま悩んでいるわしに、





「ごめんなさい…
 やはりこんな無理なお願いなど
 聞き入れては
 もらえないですよね?」





そう肩を落とすと
重そうなバッグを持ち上げて、
歩き出そうとしている。





春江の吐いたため息が
真っ白く澄んだ空気に広がった。





わしは慌てて春江を追うと、
トボトボと歩く先を遮った。









< 81 / 202 >

この作品をシェア

pagetop