今度はあなたからプロポーズして
とりあえずは
春江を呼び止めたものの、
わしがためらっていたのは、
結婚前の女性が
男の部屋に泊まること以外にも、
理由があった。
わしは町外れの長屋住まいで、
春江を招くには
相応しい部屋ではなかった。
トイレも共同だし、
風呂も銭湯に行くしか手段はない。
それ以前に、
春江がわしの部屋を見たら、
どんな顔をするだろうか?
と想像するだけで怖かった。
道中、何度も言おうとしたが、
結局、家のことは言い出せずに
長屋の入口まで着いてしまった。
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