今度はあなたからプロポーズして
喫茶店………(恭一と奈々)
恭一は、奈々子の指示通りに
【モンパルナス】に向かった。
【モンパルナス】は比較的分かり
やすい位置にあり、
迷わずに辿り着くことができた。
店の中はジャズが流れていて、
木目調の内装は、
かなり年季が入っている。
カウンター奥では
口ひげを蓄えた渋めのマスターが
コーヒーを淹れていた。
店内は割りと空いていたが、
無意識に後ろめたさが出たのか
恭一はあえて一番奥の席を選んで
席についた。
奈々子を待つ間、
いろんな葛藤が交錯した。
無論、残してきた留美のことだ。
自分の中で
一線は引いてはいるものの
今ここにいること自体、
傍から見れば許しがたいことだろう。
だが、その逆にエレベーターに
乗り込むときの菜々子の笑顔に
戻って良かったと思う自分もいる。
とりあえず菜々子を待ちながら
落ち着きを取り戻すかのように、
留美の行動を予測した。
・