その音色はどこまでも美しく
急いで立ち上がりスカートを戻すと何事もなかったかのように席につく。

周りから男子のよくやったとか、感動したとかいう黄色い声と、女子の最低とか、変態とかいう黒い声が飛び交う。

それに苦笑いで答えながら、さすがにやりすぎたと後悔する。

そして謝ろうと声をかけようとした時だった。

ちらっと可奈が後ろを向く。

若干涙目になっていた。

そして声を出さずに口だけで動かす。

なになに、こ…ろ…す?

言い終えると持っていたシャーペンを音を立てて片手でへし折る。

その瞬間、俺は死を覚悟し、授業が終わったらすぐ逃げようと考えたのだった。
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