その音色はどこまでも美しく
「まあ、そういうわけで運が悪かったんですよ」

一通り事情を話し終え、ため息をつく。

「……君は子供か。とても受験生とは思えないな」

静かに話しを聞いていた頼子さんがやれやれと首を振る。

どうやら呆れているようだ。

「授業中に居眠りをしていた可奈も悪いが……。少し可哀相になってきたよ」

「すいません。あの時はああするしかなかったんです」

お約束的に。

「はあ、……まあもう何も言うまい。しかし、」

そこで一旦、言葉を区切る。

呆れたような表情から一転、小悪魔のような微笑みに変わる。

「本当に君は可奈が好きなんだな」

「ぶっ!?」

飲みかけていたコーヒーが口から噴水のように吹き出す。

幸い、頼子さんにはかからなかったが床に黒いものが点々とついた。

今、恐ろしい言葉を耳にしたような。

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