その音色はどこまでも美しく
「いや、君は面白いね。実にいい」

俺には何のことだかさっぱりだ。

気でも触れたんじゃないかと疑い、思わず怪訝な表情を浮かべてしまう。

「悪かったよ。だからそんな顔で見ないでくれ」

「どういうことか説明してもらえませんか?俺にはまったく何のことだか」

「教えてあげたいのは山々なんだが」

ほら、と言った瞬間チャイムが鳴り響いた。

授業が終わったのだろう。

だが、今から昼休憩なので俺は全然慌てないし、わけのわからないまま終わるのは嫌だった。

椅子に深く腰をかけ直す。

「構いません。教えて下さい」

聞くまでは帰りません、という意志を態度で示す。

「弱ったな。もうお迎えも来ているんだが」

そう言って入り口のドア、俺の後ろを指差す。

お迎え?

つられて振り変える。

鬼がいた。
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