その音色はどこまでも美しく
それでも俺は認めない
意識が戻ったのは昼休憩が終わり、既に五時限目が始まった後だった。

身体は全身が打撲したかのように痛み、思うように動いてくれない。

保健室で寝かされていた俺はそのままサボろうとしたのだが、

「這ってでも来い。サボったら死刑、だそうだ」

という頼子さんの言葉により泣く泣く、痛む身体に鞭打って教室に戻ってきたのだった。

だが、黒板に書かれた文字を見て俺は力尽きる。

『自習』

なんのために、俺は戻ってきたんだろうか……。

そんな虚しい気持ちを胸にしまい、机に突っ伏した。

「うへえ、死ぬー」

可奈は友達と勉強しているようで、前の席が空いていた。

たぶん、俺が戻ってきたことにも気付いてないんだろうな。

遠くで笑っている可奈を見て、腹立たしい気持ちより少し寂しくなった。

「さーかーがーみー」

「うおっ!?」

哀愁に浸っていると、いきなり名前を呼ばれ肩を捕まれる。

「……なんだ、武人か。びっくりさせんなよ」

そこには島田武人(しまだたけひと)がにやにやしながら立っていた。


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