あにばーさりー ばーすでい




ーー俺、黒崎京也。


今日も面倒な学校に通っちゃったりしてるわけで、
やっと終わったから、
暇つぶしに音楽室にでも行ってくつろぐか、と歩いていたら、
先に音楽室に誰かがいる気配を感じた


今日は部活もない日なのに
先客か・・・



「ついてねぇ。」



あきらめてそこを去ろうとしたときーー



「・・・え?」



そこにいた女と、目についた腕の傷。


あれ、アキ・・・?


あの傷ーー

アキは同じクラスで、挨拶を交わしたりとかそんくらいの仲。

俺のイメージとしては、いつも笑ってて悲しい話とかネガティブになったりとか、そういう話を聞いたことは一度もなかった

だからその分、今のシーンが頭に焼き付いて離れようとしなかった

高校に入って初めて見たアキの悲しそうな顔。

正直言って、面倒なことに首を突っ込むようなことはしたくない
俺は、悲しんでるやつをどう慰めればいいのかとか、泣いたりしたやつをどう泣き止ませるのかとか、そんな対処法も兼ね備えてないわけだ。

俺が話をかけた時点であいつはもっと悲しい顔をするんじゃないのか?


ーー帰ろう。


そのまま黙って見過ごそうとしたが、今にも泣きそうなアキの顔。

腕を見ながらうつむく表情は、
本当にアキのものなのかと疑ってしまうくらい。



「・・・」




足が止まった。



はぁ、面倒。


俺はそっと音楽室に入る。
ギシッと床が軋む音が響いた

軽く頭をさげると
不自然じゃないくらいの顔でアキを見た。



「・・・っ!」



見られた、とでも言うような驚きを見せたアキ。

さっと腕を後ろに回す彼女はやっぱり今にも泣きそうで、崩れそうな顔をしていて・・
あぁ、アキが泣き崩れたら、どうしよう。

慰めの言葉が全然湧かない。


・・・帰ればよかった。



「よっ・・・」



なんて、苦し紛れに挨拶。

今日の朝にも挨拶したってゆうのに、今のはちょっと、失敗だったか

すると彼女は一回、鼻をすすって



「どうしたの?キョウ」



短くそういって、笑った。


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