あにばーさりー ばーすでい




「あたしね」



急に発せられた言葉。

俺は反射的にアキを見つめた。



「あたし、お母さんいないんだ」



あぁ

俺はバカだ、

本当にバカだ。


こんな時、どんな顔すればいいんだ?

かけてやることばもみつからないんだけど

まぁそんなこと思っても、時すでに遅しってやつだ

アキは俺の反応を確認しつつ、
力なく笑うと、話を続けた。



「お父さんは、あたしがいると邪魔みたいで
よく暴力振るわされてた。

でも、なんとなく大丈夫だったんだ。

だから耐えてこられたし、友達の前では笑ってた。


でもある日突然、あたしはなんで生きてるんだろうって
そんな疑問を抱くようになったの。

死んだらどうなるのかな、って思ったとき
腕から血が流れて・・・」



そこまで話を聞いたとき、
俺は無意識にアキを抱きしめていた。


ガタンッと、机がずれる音。


何をやってるんだ、俺は



「キョウ・・・?」



強く、強く。



「なんでお前、泣かないんだよ」


「・・・」


「つらいなら、泣けばいいじゃねーか。」


「だって」


「無理すんなよ・・・」



なに、やってんだ本当。


はっと我に返った時には、
アキが下を向いて下唇を噛んでいた。



「ごめん・・・」



やってしまったこと後悔しても遅い。

俺はとっさにアキから離れると、



「忘れて。」



そう言って、
鞄を持って教室を出て行った。




この時の俺は自分のことにいっぱいいっぱいだったけど

このあと一人残されたアキのことを考えると、
どうして帰ってしまったのか、

ーー本当に俺は、バカだと思った。











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