あにばーさりー ばーすでい


ーー「あざしたぁ」


「・・・」




ぷくうっと膨れるほっぺの隣。

消毒を済ませたアキは、さっきのお姫様抱っこに恥ずかしがっている、ように見える。
俺はなんだかその顔を見て笑ってしまった。



「ちょ、笑わないでよ」


「お前はフグか」


「フグじゃないもん!」



ははっと笑いながらからかう俺。


なんか、俺のキャラじゃねぇ。
こいつと居ると頭がおかしくなるのか


ーー帰ろう。


笑った顔を無に直すと、
じゃあな、と言って俺は教室から鞄を持ってアキと別れた。





ーー文化祭前日。

今日はみんなで遊びに行くことになった。

トウマはユキナのキューピッドをしようと
キョウを誘うことにした。




あぁ・・正直、面倒だ。

俺がなんで呼ばれたのかもわからない


ただ、あまりにもトウマが必至に俺に来てほしいと言うから
仕方なく、だ。

遊びに行って疲れるくらいなら
家に帰って早く寝たい


ま、アキがいるならちょっとは楽しめるかもな。


ーーってまた。
なんだんだ俺

アキがいることに嬉しさを覚えて
アキをからかうことが楽しい、なんて

まるで、俺ーー




「いや、違う」


「え、何が違うのキョウたん?」



いつの間にか声に出ていた心の内。

やべ、と軽く苦笑いを浮かべて、少しの紛らわしとしてトウマをいじった。



「つかキョウたんってなんなんだよ毎回」


「え?かわいいじゃん、キョウたーん♪」


「・・黙れ」


「んもー、冷たいんだからキョウたんは!」



あぁ、いじらなきゃよかった

うざい

でも、このやり取りが楽しいなんて


矛盾してるな俺・・
最近は矛盾ばっかりだ

ま、いいかそんなことは





「やっほー!」


「お待たせしましたっ」



ちょうどいいようなタイミングで教室のドアが開いた。

そこに入ってくるアキとユキナとメグ

待ってましたと言わんばかりのわかりやすいトウマの反応。
苦笑いを浮かべ、みんなで教室を後にした。





< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop