愛LOVE…

翌朝の二人

「あー!加奈。おまえ昨日といい今日といい、いったい何だってんだよ!」

プハァーと一息ついていると、突然後ろの方から直哉の興奮したような怒鳴り声が響いた。

多分彼には言いたい事が山程あるはずだ。
だがあえてあたしは知らんぷりをする。

そんなあたしと直哉を、さくらは無表情で交互に見比べた。

そして、

「こりゃ見物だわ」

などと小声で呟いたのを、あたしは聞き逃さなかった。

何も知らない直哉は、ズカズカとあたしの方に向かって歩いてくる。

――気マズイなぁ。

別にあたしは、自分ががとった行動を後悔してはいないし、悪かったとも思っていない。

でも、事情を知らない直哉にしてみれば、あたしが一方的に悪いって事になっているのだろう。

そう考えると、今直哉に責められたとしてあたしに何が言えるだろう。

直哉を納得させられるような言い訳が思い浮かばない。
< 31 / 66 >

この作品をシェア

pagetop