愛LOVE…
素っ気なく、けれど怒りを感じさせる目つきで彼が言い放った言葉に、直哉はきょとんとしていた。

殴られた事に腹を立てる事も忘れ、ただ理解に苦しんでいるようだ。

「な、んだよ……過ちって。俺何か悪い事したか?」

加村君はそれだけ言うと、悪びれもせず自分の席に戻って行った。

一方、立ち上がり学ランの裾についたゴミなどを手で払う直哉は、あたしに

「なぁ?」

などと同意を求める。

ただただあっけにとられて、二人を見ていたいたあたしだが、直哉と目が合うと我に還った。

「知らない。自分の胸に聞いてみれば?」

「な、何なんだよ加奈まで。まさかおまえ、あいつに変な事吹き込んだんじゃないだろうな?」

別に変な事を言ったわけでも、吹き込んだわけでもない。けど。


「例えばどんな事よ?」
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