愛LOVE…
「やっぱ、そっか。まだ仲良くなって一ヶ月やそこらの俺なんかじゃ、十六年連れ添った直哉には到底勝てないって事だよな」

何でもない事を話すような、いつもの優しい口調の彼に、あたしは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

こんな時何て言ったらいいのか、ふさわしい言葉が見つからない。

「……本当、ゴメン」

あやまるだけで精一杯だった。

加村君は掴んでいたあたしの腕をようやく放すと、直哉を追いかけるよう促した。

「俺当分諦めるつもりないから。気が変わったら、いつでも待ってるから。引き留めて、いきなり告白なんかしたりしてゴメン。早く追いかけて誤解解いてきなよ」

直哉と比べたら人間が出来ている加村君は、笑顔でそれだけ言うと自分の席に戻って行った。

それはきっと、あたしを困らせない為の作り笑顔だったはずだ。
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