愛LOVE…
「はぁ……。告白される事はあっても、いきなりキスされそうになったのは初めてだったから、あん時は驚いて一瞬足がすくんじまったんだよな。けど、ちゃんと断って来たぜ」

語尾を強めて、なぜか得意気な直哉の言葉を聞き、あたしはへなへなとその場に崩れ落ちてしまった。

「お、おい加奈、どうした?」

アレはあたしの勝手な思い違いだった事を知り、急に緊張の糸が切れ、気が抜けてしまったのだ。

「じゃあ、あたしの早とちりだったんだ……」

それでもまだ気持ちを整理する事ができず、心臓の音はドクドクと早かった。

「まさか加奈、それで昨日から俺に冷たかったのかよ」

すると、ニヤッと笑みを浮かべて直哉は言った。

「そうよ。だっていきなり目の前でキスなんてあり得ないじゃない?それで、あの後たまたま加村君と会って、それを言ったの」

泣いた事はどうしても言えなかった。

だって悔しい気がしたんだもん。
< 51 / 66 >

この作品をシェア

pagetop