愛LOVE…
好きな人がいれば、例えそれが片想いでも、恋のパワーはどんな力よりも強くて優しい魔法の力。

「それが、恋なんだよ」

「あ……」

顔を上げた時、堪えきれずに流れ出した涙の粒が、ポタポタと制服のスカートに落ちた。

……何年かぶりに彼に見せる涙だった。

あたしは、直哉の前で泣くなんて格好悪いと思い、涙を腕で拭って無理に笑顔を作ろうとした。
でも、多分うまく作れていないと思う。

「でも、直哉があたしの事好きじゃないのはわかったから。お互い明日から新しい恋探さな……、って、え?」

直哉にこれ以上困った顔はさせたくないと思い、話を終わらせようとしたのだが、その時いきなり直哉の両手が伸びてきて、そしてあたしの体に触れた。


――な、に……?

信じられない事に、あたしは直哉のそのたくましい両腕に、しっかりと抱きしめられていたのだ。

「……何、で」
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