愛LOVE…
「好きじゃないなんて、俺一言も言ってないぜ。ただ、俺じゃあおまえの彼氏には不足じゃないかって思ってたんだ。ずっと。……けど、今のおまえの言葉と涙見て気が変わった。やっぱ加奈は可愛いな」

「な、に?」

「正直に言うけど、俺も加奈の事ずっと好きだったんだよ」

「え?」

「昔から加奈に好意は抱いていたんだ。ただ、それが恋愛対象に変わったのは多分もっと後だったと思うけど」

懐かしいように言う彼は、もはやさっきまでの険しい表情など欠片もない。

「ブサイクだバカだと俺をけなすのは、俺が嫌いだからだと思ってたし、しっかり者で人望もあるおまえに、俺なんか似合わないと思ってたからずっと気持ち押し殺してたんだ。好きになっちゃいけないって」

いつになく真面目にそう言った直哉だが、あたしにはそう簡単に信じられる内容ではなかった。

「それって……」
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