社長の溺愛
突撃しないって言ってたよな…
マンションを出てすぐに黒塗りのベンツが数台ついていた
当たり前のように後部座席に乗り込む秋也
どうやら組の車らしく、運転手の方はそれはそれは厳つい顔をしていて、表情をうかがえないようなサングラスをかけている
俺たちも促され同じ車に乗り込んだ
車内には中心にテーブルがあり、それを囲うようにソファーのような座席がある
俺の自宅にもこんな車は数台あったと思うがどうも居心地が悪い
男だらけだからか、圧迫感からか…はたまた秋也の威圧感からか…
「とりあえず作戦な~」
硬調していた空気を見事に崩した声はもちろん幸弘で、翼救出作戦の説明をしてくれた
まず最初に遼と俺が行く、俺は遼の知り合いという設定
SPたちを上手く騙せたら俺は翼を探しに行き、遼と秋也と数人の組合はバックについてくれるらしい
もしものときのために幸弘は警察にも手を回しとくらしい
使えるかどうかはわからないが…
「やれそうか?」
切れ長の目を流して俺に問いかける秋也
「翼を助けるためならなんでもする、死んでも構わない」
「そうか…」
ほんの少し微笑した秋也は窓の外へと視線を移した
早く、早く会いたい
触れて確かめたい
泣いてなければいいが…