社長の溺愛
バンッ―――……
つい車のドアを閉めるのに力が入ってしまう
遠くの方にあるのは無駄に着飾った宮下吉雄の別荘
遠目でみてもわかるほど黒いSPが4人ほど扉の前に立っている
「行きますよ…?」
不安そうな瞳を俺に向ける遼
既に二人だけで歩き始めているのにも関わらず謎の行きますよ宣言
「……あぁ」
一様遅れて返事をした
別荘だと思われる一軒の家の前までつくとすぐに近くにいたSPが話しかけてきた
「失礼します、遼さまでらっしゃるかと…」
どうやらここのSPには遼の顔は知られているらしい
「兄さんに呼ばれたんです」
さっきまでの不安そうな瞳はどこえやら、遼は淡々と嘘を並べる
「そのようなことは聞いていませんが?それに…」
黒いSPはチラッと俺を見ると何かを促すように視線を背けた
それに気づいた遼は「あぁー…」と続ける
「俺の知り合いだよ、たまたま一緒にいたんでね……兄さんにも了承は得てるよ」