社長の溺愛



松谷翼〔まつたにつばさ〕

それが彼女の名前。



成瀬コーポレーションの養子であり一人娘



高校3年の17歳



成瀬には7歳で引き取られ、何不自由ない生活を送っている。

だか、彼女には仕事がある。


それは、『レンタル』されること。


取引先や接待に連れていき、そのまま“貸し出す”


借り主の言いなりとなり、人形として過ごすのだ


異質の美貌と兼ね備えた頭の良さを欲しがる男は山ほど


レンタルすることでレンタル料をもらう


今の成瀬は70%が彼女とのかかわり合いで成り立っている。


ひとつだけ彼女によかったことと言えばそれは“手を出されていない”ということ


貸し出されていた身体ならいくらでも手を出されていたはずだが、幸弘が調べ上げた結果。彼女は一切、誰とも身体の関係を持っていなかった。


取引先でも接待でも


本物の人形のように言いなりになるだけ


そして、彼女の瞳は何も写さなくなった


ただ見るだけの『目』


光など、輝きなどは一切を排除した、ただの人形の目


幸弘が調べた結果、彼女を取り巻く様々な環境が浮かび上がった。


だが、ひとつだけ。


有能で、かなりの情報網を持っている幸弘でさえもつかめなかったものがある






それは







『松谷翼の7歳までの記録』







誕生日はあるものの、その他の出生の出来事

両親について

引き取り元の施設





とにかくあるはずの記録がすべて抹消されていた。




過去までも消された彼女は、光を見ることはあるのだろうか…ーーー。







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