社長の溺愛
「被害者の方ですか?少々お話を聞かせていただきたいんですが…」
その警官に何故だか無性に腹がたつ
こんな状態の翼が上手く話せるわけがない、それに知らないひとだらけなんだから怖いに決まってる
今はやめてくれと断ろうと「いや…」と発したとき
横からスーツ姿の中年期の男が現れた
「ミナセ刑事!」
警官はビシッと敬礼する
それに男は軽く返事をして「俺が話をするから」と警官を遠ざけた
「すまない、配慮の足りない部下で」
どうやらさっきの警官の上司らしい、刑事って呼ばれてたもんな…
「いえ、大丈夫です」
「私は水瀬といいます、宮下議員の汚職が発覚しましてね、それに余罪も調べたところ性的犯罪もありまして…」
悔しそうに震える翼を見つめる水瀬は本物の刑事だ、正義一本の刑事…
きっと汚職のことを流したのは幸弘だろうな、あいつならなんでも知ってる気がする
「しばらくは休ませてやってください、聞き取り調査はいつでも出来ますから」
水瀬はふわっと優しそうに笑い、「では」と去って行った