社長の溺愛
水瀬の後ろ姿を確認し足早に別荘から出た
床には家のなかにもいたらしいSPが倒れていて、さっきまでいた組員は姿を消していた
きっと警察がいるからだろう
既に朝を迎えようとしている外に一歩でると、待ってましたと言わんばかりのベンツが着いていた
中からドアが開き「慎、早く翼ちゃんを」という声が聞こえた
その声に軽く頷いて車に乗り込んだ
中には秋也と幸弘がいて、来たときにいたはずの遼がいなかった
「幸弘…遼は?」
「あいつの身内だから取り調べを受けるらしい」
あぁ、そうだった
遼も共犯になってしまうんだ、いくら今回のことに力を貸してくれていたとしても、見て見ぬふりをしてあいつの言いなりになっていたことに変わりはない
なんだか少し悔しい気持ちになった
翼を横に座らせて抱き寄せると力なく腕に抱き着いてくる
毛布にくるまった翼は小さく見えた
「大丈夫だから」
そう言って頭を撫でてやると澄んだ瞳から涙を流し、何かが切れたように声をだしながら泣いた