社長の溺愛



「…………」


それから翼が口を開くことはなく、車内は沈黙に包まれていった―――……



「おはようござ…」


「社長!おは…」


「……おはようござい…ます…」


今日から翼も働くわけだから会社の人間にも隠し続けるわけにはいかない


そのためいつもの裏口からではなく、表の入り口から入った


しかし…なんだこのざわめきは!


まぁ、理由は痛いくらいに分かっているが…見るんじゃねぇよ…


特にそこの男性社員ども!!!


ざわめきの理由はきっと、否、絶対に俺の横にぴったりとくっついている仔猫だろう


あぁ…可愛い…


じゃなくて…


俺が怖がらせないようにと、なるべくひとに会わせないようにしてきたからか、大量のあいさつと大人に怖がって、軽く涙目になっている



社内だから手を繋ぐのも気がひける…


だが、それじゃ翼が不安になるから俺の腕にくっつかせてみた


「皆さんおはようございます」
軽く会釈して毎朝の如くあいさつをかわしていくが、誰もが目を見開いて固まっている


いらないことに男性社員なんかは翼を見て頬を赤らめている



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