社長の溺愛



チーン♪


明るいベルが最上階を知らせる


きらびやかに着飾ったフロアへと足を進め、幸弘が無駄に派手な扉に手をかける



カチャ…



一段と眩しい部屋が目にはいると同時に


「お待ちしてましたよ、朝倉社長!」


という聞きたくもない声が耳に入ってきた


所詮は子会社のくせに、調子こきやがって


胸に秘めた思いは押し込んで、俺はさも嬉しそうな笑顔を作った


「初めまして成瀬社長、Wing代表取締役の朝倉慎です」


俺がにこりと挨拶すると斜め後ろに佇む(たたずむ)幸弘が


「秘書の飯塚です」


と控えめに挨拶をする



「まぁ、どうぞ座ってくださいよ」


「では、失礼します」


促されるままに趣味の悪いソファーに腰かける


幸弘は座らずに、ソファーの横にぴったりと定位置を確保している


「それで、朝倉社長のお話とは?」


取引でも持ち込まれるとおもってるのか、はたまた融資でもされると勘違いをはためかせてるのか


まぁどうでもいい



俺は耐えきれない笑いを口元に抑えて淡々と口にした






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