社長の溺愛
「とにかく…成瀬コーポレーションには潰れてもらいます」
「それから…ーーー「なぜだ!たかがブランド会社がなんで私の会社に目をつけた!」
俺の言葉を荒い呼吸と声で遮り、不満をぶちまけるその姿に『社長』の面影は既にない
否、元々なかったに等しいだろう
なにせ汚い手を使わければ生き残れなかったのだから
「そうですね…理由が必要だと?」
「ああ!せめて理由くらい言え!」
悪趣味な机を感情のままに叩くから、その幼稚さに思わず笑ってしまう
「何がおかしい!」
過剰反応なお方だ
「少し落ち着いてください」
幸弘が見苦しいものでも見るような目をして言う
ギッと幸弘を睨み付けた成瀬は「なんで私の会社なんだ!」と繰り返した
うるさいやつだ
「簡単ですよ、あなたの商売道具の翼さんを貰うためです」
商売道具なんて言葉で彼女を表したくなかったが、この男にはこうでも言わないと伝わらない
成瀬は一瞬だけ目を見開いたと思ったらニヤリとほくそ笑み、自信満々といった顔をした
…ーーーかかったな
「…翼か、翼が欲しいならくれてやるよ!そのかわり、会社については手を引いてもらおうか…!」
まるで勝ったと言わんばかりの表情
俺は悔しそうに眉を寄せて
少しの間押し黙る
そして…ーーー
「………いいでしょう、ですが…翼さんとの養子縁組は解消させて頂きます」
まるで苦渋の決断とも言える、心底苦しそうな顔を歪ませる
成瀬は瞬時に考え込むと
「いいだろう…好きにしろ」
と呟いた
多少気になることがあったが、事は上手く進んだ
「ではこちらの書類にサインを」
幸弘が手続き用のを取りだし、ペンと一緒に成瀬の前にだす
少し躊躇ったあと、成瀬は書類にサインをした
サインを確認して事を済ませたので席をたつ
部屋を出る寸前に、満面の笑みを浮かべて思い出したように
「これはには5000万入ってます、翼さんの代わりといってはなんですが」
と呟いた
それに
「その5000万で新しい会社でも作ってくださいよ、“成瀬さん”」
なんのことだと眉間に皺を寄せてる成瀬を横目に趣味の悪い部屋をでた