社長の溺愛
「翼、下まで一緒に行くからカバン持つよ」
「ありがとう…じゃあうさぎ――……」
「うさぎじゃなくてカバンな」
うさぎを差し出してきた翼にやんわりと断りをいれ、その代わりに手を繋ぐ
一階につきエントランスにでると、黒塗りの車が付けられていて
運転手の厳つい男性がドアを開けていた
「若、“ユウ”さんが先ほど起床しました」
運転手が控えめに話すから、低い声が妙に目立つ
繋いでいる手に微かながら力が入った
やっぱり知らない男は恐いよな…
その証拠にうさぎが小刻みに震えている
バイブ機能はないはずだからな、翼が震えてるんだな
秋也はそんな彼女を見て
「ちょうどいい」
と呟いて開けられたドアに顔だけ覗かせ、車内にいる誰かに向かって声を発した
「“ユウ”こっちに来い」