社長の溺愛



「しっかしお前は演技に磨きがかかったな~」


行きとは違った明るい雰囲気の車内で幸弘が呟く


「簡単にかかるほうが悪いんだよ」


それに対して俺は微笑しながら答えた


「うっわ~…成瀬も災難だな、明日には会社は終わりなのに」

「だから金渡したんだろ、あいつなら5000万なんて今日中に使うからな」


「使ってもらわないと困るしな」


「ああ、派手に遊べばいいさ」




成瀬との交換条件は真っ赤な嘘に過ぎない


嘘がバレたときに、裁判沙汰にさせないために5000万を使わせる


使った事実があれば困るのは成瀬だからな


使わせるためにわざわざ仕組んだんだ。


これで縛るものはもう無い



「幸弘、迎えにいくぞ」


「分かってるって」


ハンドルを器用に操り、道を進んでいく車


早く会いたい


彼女の声を聞きたい








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