社長の溺愛



「慎…?」


幸弘の声にハッとして簡単に自己紹介をした


「朝倉慎、ブランド会社の社長をしてる」


すると彼女は「社長」と静かに一度だけ復唱をした


初めて聞いた声は幼さが残っていて、改めて17歳だということを思わせる



「なんで俺たちがここにいるのかわかる?」


いつになく低姿勢な幸弘は、少なからず彼女の瞳に緊張している


俺はわかるわけないだろ、と内心ため息をついた


だが、彼女からは「はい」としっかり聞こえた


そして


「“次のひと”」


とその無表情を一切崩さずに淡々と呟いた



『次のひと』が指してる意味は言われなくてもわかる


次の『レンタル先』を意味してるのだ



おれはなるべく警戒させないように


「とりあえず、車に乗ろうか」

と笑顔を向けて促した







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