社長の溺愛



学生カバンを膝の上に置いて、落ち着き払った様子で座る彼女は、いったい何度レンタルされてきたのだろうか…


考えたくもない



「とりあえず説明してあげればいいじゃん」


運転席から聞こえてきた声に少し頷いて、俺は彼女がここにいる理由を話した


街で見たときに気になったこと

調べたら成瀬コーポレーションの娘だったということ

そして松谷翼がレンタル商品となっていたことを知り、今日成瀬コーポレーションに出向いたこと

そして松谷翼を切り離すことができたこと



俺の気持ちは伏せつつもこと細かく説明した


「わかったか…?」


俺が話している間は、まるで見透かされているような気分だった


彼女は瞬きを一つして「つまり…ー」と本日二回目の声を出した


「主人があなたに変更しただけ」



それは俺にとってキツイ一言だった


それではこの子にとって何も変わらないからだ


ただ飼い主が変わっただけなんだ


でも、今ここで違うと言ったところで彼女にとって俺の価値は変わらないと思う



俺は数回頷いて「俺のことは慎と呼べばいい」とあなたと呼ばれたことを訂正した



松谷翼は興味無さそうに瞳を伏せた





まるで仔猫だ


自由を奪われた飼い猫



目が瞳が写すものは『敵』で、自分自身でさえ心を許してないと思える


“生かされてる”だけの無垢な仔猫




俺は手懐けられるのか少々疑問に感じた









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