社長の溺愛



車はマンションには向かわずに、そのまま会社に着いた


少しだが俺の仕事が残っていたからだ


彼女がいたから裏口から入った

変に噂立っても説明のしようがないからだ



社長室の前まで行くと


「俺も仕事あっから~」


と言い捨て、スキップしながら幸弘が消えた


どうせまた女だろ

今度は新人の並木か…?





俺と彼女しかいない社長室はなんとも言えない空気だった


特に気まずいわけじゃないが、俺が無意識に彼女のことを気にしてしまう



「翼」


なんて呼ぼうか迷った挙げ句翼と呼び捨てた


彼女はまったくの無反応


「なんかあったら横のボタン押せ…誰かしら来るから」


横のボタンとは、翼が座ってるソファーの近くにあるもの


それにすら無反応な翼は、膝を折り曲げてソファーの隅に身体を寄せてる


本当に猫のようだ



俺は翼のことを気にしすぎて遅くなった仕事をなんとか終わらせた






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