社長の溺愛
「…じゃあ行ってもいいの?」
まるで何かを恐れているようにか弱く確認を促す
「ああ、好きなだけ行けばいいよ」
俺は当たり前のことを言っただけなのに、彼女にとっては初めてのことだったらしい
「なぁ、聞いてもいいか?」
翼は不思議そうに瞳を揺らすと、首を小さく傾げた
「どうして…許可を求めた?」
なるべく優しく問いかけると、まるで他人事のように話し始める
「だいたいの主人は…行っちゃだめって言うの
昨日の主人は気まぐれで許可してくれたから」
この子には本当に自由がなかったんだ
逆らうことなど教えてもらったこともないんだろう
「選択肢をくれたのは……慎が初めて」
まただ、胸が締め付けられるような感覚が俺を襲う
翼は人形として生かされてきたんだ
俺は起き上がり、寝ている翼を座らせると、しっかりと一瞬たりとも目を逸らさずに、出来る限りの思いを込めて伝えた