社長の溺愛



翼への思考回路はそんな現実の声によってバッサリと断ち切られる



はぁ……


嫌々立ち上がり重い足取りで扉へと向か……わずに


「社長……?」


軌道修正をすると前を歩いていた彩加の不思議がる声


ソファーに駆け寄ってチュッとつまらなそうにそっぽを向いていた仔猫の頬にキスをする


彩加がいることが少々気になるが、翼に拗ねられでもしたら俺の世界は終わる



ごめんなと、好きだよと、2つの意味を込めてキスをすれば彼女は茶色い瞳を数回伏せて



「お仕事頑張って」


と文句ひとつ言わずにそれだけ呟いた



どうやら拗ねてはないようだ



ありがとう、ともう一度キスをする



ちらっと彩加を見た翼はなぜかすぐに目を逸らし、じっと俺を見る



「待ってるよ…女のひと…」



その言葉通り、扉の前に立っている


なんだか本当に離れがたい

翼とずっと一緒にいたい…

なんて考えてる場合ではなくて

「社長、大事な会議ですよ?」

早く行かなければいけない雰囲気


「わかってるよ、後でな翼」

「……ばいばい」



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