社長の溺愛



空気を振動させた怒鳴り声はその場を一気に凍り付かせた


それは俺が怒鳴ったことでそうなったのではない


“翼”に対しての言葉だということが、そうさせたのだ


俺はやってはいけないことを、今、したのだ


言の葉にした途端に繰り返しなった危険信号は消えることを覚えず


まるで、俺に懺悔を求めるかのように脳内を締め付けていく


焦る、焦る、焦る


怒鳴った直後に彼女は小さい身体を震わせた


やってしまった…


一番護らなくちゃいけない彼女を突き放したのだ


大切に大切にと、酷く優しくして、酷く突き放したのだ


ベッドで身を震わせた彼女はゆっくりと俺を見る


茶色い瞳には今にも溢れてしまいそうな水が溜まって


彼女の表情をさらに歪ませる


止めろ、止めろ、やめてくれっ


「っばさ、ごめ「キライ」


っ……


やめてくれ



「つ、ばさ…」



行かないでくれ



「きらい」



っやめて…くれ……



「慎なんて…大嫌いっ……」





どうして

離れていくんだ………


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