社長の溺愛



ごめん、ごめん


謝ろうとして口を開けば遮られて拒絶をされた


『大嫌い』


たった一言でも、俺たちの間では宝物のように大切に繊細に使ってきた


それを涙を浮かべながら叫んだ彼女は


どんなに苦しいのだろうか


自分の未熟さに呆れるしかない


チクチクチクチク……


それでも時間は進んでいく


思考はすでに止まってしまっているというのに


それほどまでに『大嫌い』という言葉は俺を酷く突き落とした


「慎…もう行きましょう、翼ちゃんだってそう言ってるじゃない」



このときはただただ頷くしかなかった



たとえ彩加がほくそ笑んでいようと


たとえ愛する翼が瞳を闇色に染めようと



未来なんて予想できるわけないじゃないか


まさか……



彼女が本当にいなくなるなんて…



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