社長の溺愛
後悔なんてしても今更だということなんかわかっていた
それでも自分の若さや、未熟さを呪う
そんな調子で今夜も会社で日をまたごうとしていた
仕事だという理由の前に、会わせる顔なんて持ち合わせてない
馬鹿な意地だったと思う
ちっぽけなプライドを抱えていたせいで、俺が彼女を追いつめたんだ
ガタッ……
脳をフル活用したせいか一瞬の隙に疲れが襲い掛かってきた
少し休もうと背もたれに身体を預ければぐっと沈んでいく
眼鏡を外して天井を見上げれば、やはり無駄に金をかけているだけあって空気をもて余している
『慎…大好き…』
ふと聞こえた愛しい声
はっと立ち上がっても翼がいるわけなんてない
代わりに、無機質な着信音が響いた
着信元は幸弘と表示していて、少し迷ったあとにそれを手にとる
《もしも《慎っ……翼ちゃんが…》