社長の溺愛
バクバクバクッ……
尋常じゃない速度で心臓が波打つ
《翼ちゃんが、いない……!》
《っ……》
ガックン…膝の力一気に抜けて脚を折る
持っていたはずの携帯はいつの間にか大理石を叩きつけていて
俺も同じく……
とはいかずなんとか白革のチェアに倒れ込んだ
頭を打つことは回避したものの、携帯が発する幸弘の声に耳を貸すほど力はなかった
意識が遠のいていく
翼が……いなくなった…
薄れていく意識のなかで考えるのは彼女のこと
怒鳴ったりなんかして悪かった、謝るから
謝るから
謝るから…っ…
行かないでくれ
つば、さ…っ……
《慎!おい慎っ!どうしたんだ!》
何処にいる……―――――