社長の溺愛
「なぁ、幸弘」
「ん?」
「翼は…「まだだ、ごめん」
言い終わる前になにを言おうとしたのかを理解した幸弘は、遮るように頭を振った
長年、一緒にいるだけあってか俺の様子に少し驚いているようだった
生気がまるでこもってない俺の声に気まずそうに眉を寄せる
どっさりとスプリングの上に寝ころべば、先ほどより幾分も深い彼女の香りがする
ちらりと部屋を見渡してみると寝室に置いてあったはずの数少ない翼のものが消えていた
あれこれと聞きたいことはたくさんあるが、口をついてでたのは
「いつ…いなくなったんだ…?」
なんていう、情けない言葉だ
目頭が無性に熱くなる
深くため息をついた幸弘は数秒の間をあけて話始めた