社長の溺愛
(手立て………ねぇ…)
《大丈夫だ、ありがとな》
《は?何がだいじょ…ブチッ…ツー…ツー…ツー……》
これ以上余計な詮索をされる前にと半ば無理矢理に電源ボタンを押した
些か力がこもっていることに内心驚きつつも次の連絡先を探す
《…………ぃ…ぁれ?…》
とても眠そうに呂律の回ってないのは南月
きっと熟睡していたのであろう南月は相手が誰かもわからないようだ
《朝倉の秘書の飯塚です》
《は…?朝…倉…翼の社長んとこの?》
幸弘の声によって一気に脳が覚醒した彼は「何で秘書さん?」なんてあまり驚いている様子はないように伺えた
(翼の社長か…随分な溺愛だな)
…と余計な思考は頭の隅に追いやり夏だというのに酷く冷たい部屋に二酸化炭素を吐き出す
《率直に、翼ちゃんの居場所を聞こうと思って》
《…………へぇ、どうかしたんですか翼》
秋也は念のため
(本命はこっち…)
《ちょっと諸事情がありまして》
《あっそ、悪いけど知らないっすよ、現に俺寝てたし》
《………そうですか、夜分遅くに失礼致しました》
《………いーえ、じゃ》
耳元から聞こえるのは先ほど秋也に聞かせたであろう機械音
(餓鬼が)