社長の溺愛



昨日死ぬ気で仕事をこなしたせいか、シートに背中を埋めると一気に眠気が襲ってくる


ちらりと窓の外を見れば綺麗な青空と緑が流れている


少し寝ようか、なんて思ったときには既に全身の力が抜けていた



―――――――…

――…


ふと目を覚ませば遮光カーテンの引かれた後部座席にもたれ掛かっていた


運転手は……と身体を持ち上げればそちらも気がついたのかミラー越しに頭を下げられる


「少し前に到着したのですが、お疲れのようだったのでまことに勝手ながら五起床を妨げてしまいました。
申し訳ありません」


丁寧な言葉づかいで心配りまでしてくれたというのに文句などあるはずがない


「いえ、わざわざありがとうございます」


こちらこそ、と軽く頭を下げれば綺麗な笑顔を向けられた


乗った時同様、ドアを開けてもらい真夏の空気が漂うなかへと足を踏み込む


運転手は最後にまた綺麗な笑顔をつくると「また、お呼びください」と静かに道を戻っていった


すぐ近くにあるのは白くて小さめなペンション


そこに可愛げな、愛しい影が見える



さてと、迎えにいかなくちゃな

“今度こそ”ちゃんと迎えに………



< 358 / 413 >

この作品をシェア

pagetop