社長の溺愛
‐数時間前‐
「迎えにきたよ、翼ちゃん」
「…………」
幸弘を軽く見る翼はゆっくりと瞬きをして
「……飯塚さん」
と人物と名前を確認する
「そう、飯塚さんだよ~
今日は買い物に行くから、欲しいもの考えといてね~?」
「…………」
無反応な翼を車のなかに座らせて、渋谷に向かう
車内は最近女子高生に人気の歌手の曲がかかっている
終始無言だった車内だったが、幸弘は不思議と気まずさを感じることはなかった
渋谷に着き、まず最初に109へと連れていった
普通なら服や靴を見て「あれ欲しい!」「これいいなぁ~」なんか言うのだろう
実際周りにはそんなことを口走っている女の子がたくさんいた
だが、翼は店内に興味を示すわくじゃなく、特に何もしないで幸弘の隣にいただけだった
「……翼ちゃん?好きなもの持ってきていいよ?なんなら全部買おうか?」
「…………」
翼はしばらくじっと幸弘を見て「いらない」と呟いた
ああ、ここには好きなものが無かったのか~
と今度は原宿に連れていった