社長の溺愛
白が基調とされた清潔感の漂う建物の中は、外観同様に綺麗になっている
どうやら一階はレストランになっているらしく、休憩時間なのか店内にはエプロンを着けてるひとしかいない
広い店内のカウンター席に座った俺と翼を確認すると、南月は奥に進んで姿を消す
すると
「とーるちゃーん、こっち来てー!」
という何とも気の抜けた大声が響いた
ほんの数秒で現れたのは片手に花を抱えた男性
30代後半ってところのこれまた優しそうなひとだ
とーるちゃんと呼ばれたひとだろうその人は、少し驚いたような表情を浮かべて俺たちの向かいに立った
それに続くように一足遅れた南月が花瓶を持ってきた
「とーるちゃん忘れてる」
カタン、と簡易な音を立てて置かれたそれはとーるちゃんの手に吸い込まれる
なんだか固い雰囲気になったのを破ったのは金髪の不良
「あ、この人とーるちゃん。ここの経営者っすね」