社長の溺愛
カラン、カラン―――…
古びたような、だけども上品さが溢れる木のドアが心地いい音を出す
鈴が揺れるのを若干嬉しそうに見つめる葛城さん
きっとここは大切な場所なんだろう、そんな察しができる
開かれたドアから見える外の景色は数分前と然して変わらず、涼しい風が吹き過ぎていく
一歩足を踏み入れる
繋いだ手のおかけで翼も同じタイミングで出る
くるりと振り向き「また来ます」と風にのせる
「次はお茶でも飲んでってください、あとエプロン、あげるから」
「忘れてた……」
驚いたように呟いた彼女は「ありがとうございます」と微笑む
「じゃあまた後日」
「はい、待ってます」
どちらともなく足が動き出す
しっかり繋いだ手はもう離さない
カラン、カラン―――…
背後から聞こえた音に笑みを溢しつつ携帯を取り出す
とりあえず、車を呼ばなくては