社長の溺愛



なんで泣くんだと口を動かす前に彼女の声の方が早かった


「………矢…じま…さんは?」

「…………は?」


「矢島さん…は…いいの…?」

言っている意味がわからなくて一瞬、思考が停止したが幸弘の言葉をおもいだした



それは全てが明かされたあのとき



『矢島彩加が翼ちゃんになんか吹き込んだらしいよ、泣くくらい酷いことを』



そんな頭が痛くなるような言葉だった


涙を惜しみ無く流して、それでも一生懸命伝えようとする彼女を見つめる



「なにか言われたんだろ、言ってみな」


「……………」


「言わなくちゃ翼のことを守れないんだよ、俺のために言ってみな」



スルリと身をおろして寝そべる彼女の横に並ぶ


腕枕でもするかのように抱き締めて額にキスを落とす


控えめに擦りよってきた翼はじっと俺を見つめて綺麗な唇を動かす



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