社長の溺愛
お願いと慣れない感情
それは翼との生活が始まって2週間たった朝だった
朝ごはんは毎日俺がつくる
仔猫は朝が弱いらしく、作り終わるまで寝かせてあげる
だけど、その日は違った
いつものように冷蔵庫から野菜や卵を出していたときだった
「……慎」
可愛らしい白のパジャマを身に付けたまま、ヒョコっと顔だけキッチンにのぞかせる翼
「どうした、今日は休みなんだから寝てていいぞ?」
休日の朝は特別遅い彼女は、まだ8時だというのに起きてきた
「……休みじゃない」
「………?」
パッとデジタル時計を確認するが『土曜日』とはっきり書いてある
「今日は土曜日だけど…寝惚けてんのか?」
彼女は小さく首を振って
「…違う」
と呟く
彼女の言いたいことは分かりにくい
言いたいことを表情するのに苦戦中なんだ
最近やっと言ったのが「眠い」だった
まだまだ自由に慣れるのには時間が必要だ
翼はゆっくりとキッチンまで来ると
「慎は休みじゃない」
と伏し目がちに言った
どうやら彼女は俺に合わせて早起きをしてくれたらしい
回りくどい言い方はたまに俺を嬉しくさせる